《平成30年度（2018年度）C・P・O第3回定例会》

平成31年3月19日（火）

視察報告会、グループワーク

１．道外視察報告会

昨年度から「小樽ものづくりプライド�U」をテーマとし、小樽観光とのつながりを重視した事業を実施してきた。小樽と似た課題を抱えている街の中で、官民の連携がスムーズであり、市民主導による事業展開を行っている街として広島県福山市・尾道市に着目し、先進事例を学ぶ道外視察を実施した。 【福山市と尾道市について】   どちらも瀬戸内海に面した都市であり、福山市は古くから造船の街であるとともに、鉄鋼業、電子部品等製造業などが盛んな街として、尾道市はプラスチック製品製造業、輸出用機械器具製造業などのものづくり産業が盛んな街として知られている。観光入込客数は福山市が725万人、尾道市が680万人と、小樽市に近い観光客数を有している。 【福山ビジネスサポートセンター】   中小企業者の産業支援拠点として、企業の経営相談や新商品開発などの相談に前向きな解決策を提案し、新たなチャレンジを支えるワンストップのビジネス相談窓口として機能しており、相談件数は初年度に1,700件を超える実績を誇る。センターで働いている方は厳しい審査を潜り抜けてきた人材だけあって、素晴らしい人間性と豊富なアイデアを持ち、多様な課題への総合相談を実践できる実力主義の人材確保こそが、まさに地域産業振興モデルとなっている。 【福山市ものづくり交流館】   旧そごうデパートを活用し、福山市の伝統工芸品の展示やものづくり環境を市民に提供するほか、交流の場となる工作教室などを開催している。日頃ものづくりに携わっていない層や次世代の子どもたち、ものづくり企業の方々など、どの分野にも届く目線で情報を発信しながらものづくりへの理解や関心を深めてもらうとともに、この場所からビジネスマッチングへと繋げてもらいたいという福山市産業振興課の想いが伝わる施設。 【ディスカバーリンクせとうち】   「地元愛と地元への危機感」を持ちながら、瀬戸内の魅力を生かした新たな事業の展開と地域の雇用創出を目指した日本版DMC。県営の上屋倉庫をリメイクし、サイクリング観光客をターゲットとした宿泊施設や瀬戸内の観光特産品販売、地元の食材を使ったレストランを運営する「Onomichi U2」のほか、市の書庫を譲り受けてシェアオフィスに改装した「ONOMICHI SHARE」、空き家を活用したホテル、「尾道デニムプロジェクト」など、様々な事業を手掛けており、強い地元愛が世代の違いや考え方の違いを乗り越え、一つになってプロジェクトを進めていると感じた。外部の人、いわゆる「よそ者」の意見を取込むことにより、若い人が残り、寄ってくる動機になるとともに、伝統的に根付いているものづくり文化と技術を融合させた若者の発想を起業につなげる環境が生まれていると感じた。 【NPO法人尾道空き家再生プロジェクト】   空き家を地域住民のコミュニティの場として利活用しようという発想から生まれたプロジェクト。行政では扱いづらい空き家バンクの運営や、空き家所有者と移住希望者のマッチングなどを行っているほか、空き家をゲストハウスとして改修し、運営している。尾道の人たちは街並みや人の繋がりなどの「らしさ」を大切にし、「らしさ」を伝承しながら人を育てている印象を受けた。尾道で頑張る若者、よそ者を暖かくサポートしながら、地元愛を原動力としたアクションにより、結果として多くの人が集う街となっている。 【まとめ】   今回の視察により感じたのは２点。１点は「地元のキーパーソン」の存在。行動する人のエネルギーや地元への想いが熱く、長期的なビジョンを持ちながら地元のことを考え、地元らしさを残し、自主的に事業を行っている。もう１点は、「よそ者」が与える影響であり、「よそ者」だからこそ「目に付くこと」「見えること」がある。地元の人は「よそ者」を排除せず、「よそ者」に対して多くの理解を示しており、尾道市では、そうした「よそ者排除」を感じさせない風土や文化が魅力となって、起業家が各地から集まっているように感じた。

２．グループワーク

  道外視察の報告を踏まえ、今年度のサブテーマ「外を知り構築する小樽観光とものづくり」をベースに、「活かす」、「育てる」、「引き継ぐ」の３つのテーマでグループワークを行った。

【活かすグループ】
  小樽で活かせる資源として、港のふ頭や市場、手宮線などの施設、小樽商科大学・北海道職業能力開発大学校の学生や高齢者などの「人」、雪や街並み、地元の暮らしそのものなども挙がった。また、小樽には多くの医療機関があり、名医と言われる方が市内で開業しているため、外国人観光客をターゲットに、日本（小樽）の高度な医療を資源として、医療観光という形に活かせるのではないか。小樽の高齢者は変化を嫌い、若者との交流も少ない。高齢者とものづくり、若者と観光は繋がっており、これらをそれぞれ繋げるべきである。

【育てるグループ】
  育てるとは自立させることであると考え、議論を行った。 まちづくりでは災害リスクの低さや環境の良さを活かし、小樽の特長を伸ばすことが必要との意見であった。また、一度小樽から外に出た人は、小樽人以上に小樽を愛してくれている。離れたからこそ分かる地元・小樽の良さがあり、Ｕターンの人の力を活かすことがまちづくりの人材を育てることに繋がると考える。そのようなやる気のある人をバックアップすべきである。

【引き継ぐグループ】
  尾道では観光がビジネスとして成り立っているように感じた。瀬戸内の文化や風景を活かした尾道らしさを活かせる人「キーパーソン」や、人を受け入れる尾道気質があり、本物を追求している。小樽が観光資源を引き継いでいくためには、産業の発展や雇用の維持・創出が重要であり、観光を事業として成り立たせていく団体（DMO）が必要である。

【まとめ】
  テーマ「活かす」では、出た意見やアイデアを、「人」「施設」「自然」「技術」にカテゴライズした。小樽の特徴である、「高齢者」や「学生（商大生）」などにスポットを当て、「港」「市場」「空き家」を活かしたまちづくりの提案をした。
  テーマ「育てる」では、出た意見やアイデアを、「まちづくり」「ヨソ者・若者」「連携」にカテゴライズした。「観光資源の発掘」「港を活用」「小樽の強みの発見と育成」などの意見をまとめ、ヨソ者や若者の協力や連携が大事であると提案した。
  テーマ「引き継ぐ」では、小樽らしさや小樽人気質などの「小樽の特徴」をあげ、それをビジネスモデルとして確立させ、観光と合わせDMOに発展させる提案がされた。
  最後に、３つのテーマの共通するキーワードは「人」であり、小樽の持っている特徴を資源として、人材の育成や活用をしながら、将来を描くことが必要であるとまとめた。

＊ＤＭＣ／ＤＭＯ…地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域づくりを行う法人
（Destination Management/Marketing Company/Organization）